最初のきっかけは、数年前立て続けに○億円規模の住宅を失注した事でした。どのお客様も我々の建物デザインは気に入っているが・・・事前に訪問をしたハウスメーカーで熱心な営業もあり、全館空調の知識を刷り込まれていました。「お客様:鹿内さん、全館空調ってどう思いますか?」「鹿内:う〜ん、10年後はメンテナンスで費用がかかりますしね・・・」と返答をしていました。そうしている内に正式依頼はハウスメーカーとなっていました。全館空調を導入する事で生まれる快適さもありますが、ハウスメーカーがそれを入れざるを得ない理由を当時理解ができず、ただ危機感を感じていました。
次のきっかけは、事務所のメンバーである渡辺が村越邸の設計の時に言ってきた事からです。「渡辺:鹿内さん、エアコンってメーカーの畳数表示よりも少なくて良いですよ。このHPで計算式があります」「鹿内:え・・・そんな事無いでしょ?(また変な情報のサイト見つけてきたなぁ)」と最初は軽く受け流していました。高気密・高断熱の取り組みをしている人やそれを求めるクライアントさんには当然の知識ですが、エアコンの畳数表記は昭和40年代の木造住宅の作り方を基準に計算されている事を知りました。50年前レベルの住宅の作り方を基準に、設計者はエアコンを選定し、いまでも多くの人が今年の夏は暑くなるかと量販店で14畳のリビングに14畳用のエアコンを買おうとしています。でも建物が高気密・高断熱を実践すると実はエアコンは1台(しかも驚くほど畳数の少ない機器)で成立してしまいます。
では何故全館空調を導入する必要があるのか?1台でも良いのに・・・そうせざるを得ない理由がありますが、これは全館空調に対するネガティブキャンペーンになってしまうので興味がある人は調べてみてください。
「エアコンなんてどうでも良いでしょ。建築デザインには関係ないし」というのが多くの建築家の意見だと思います。そうして多くの化石燃料由来のエネルギーが窓から壁からコンクリート表しの基礎立ち上がりから垂れ流されているのも現状です。この環境時代に消費者が求めているニーズは確実に変わってきています。一方で建築家側は、そのような数値的なロジックで形やデザインを決められてしまうのに対して拒絶感を持っています。そこには建築家が言語化できないけど各人が培ってきた「良いな」と思っている事や提供したい価値がありますし、数世紀に渡る建築の歴史から積み上げてきた空間の良さもあるという事を僕は建築デザインをしているので判ります。その両方の良さが分かるからこそ、断熱もデザインも良いとこ取りできないか?というが僕らがこの取り組みをする理由です。
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都市部で住宅を設計しながら風光明媚なリゾートでも設計をしています。
僕らの仕事はホテルや別荘など施設の設計なのですが、最近建物だけでない部分も設計しているのだなと思っています。
先日沖縄など数多くの仕事を協同したメンバーと株式会社FUUを立ち上げました。
この会社は主にリゾート地での施設の設計や開発のコンセプト立案を主業務としますが、
「なんでも屋」のような雰囲気も漂っています。
主にする事は・・・
土地を見つけてきて、開発行為の調整を行い、道路を引き込んで、建物をデザインし、家具やインテリアを選定し、アメニティやリネンを選定、さらにアクティビティも用意して、運営をする。結構、幅広いと思います。
でも、それぞれ分断されていたものを目指すべき理念の元に行っていければ、よいリゾートが残せるのではないか?今後の日本の風土としても良い状況を残せるのでは?とメンバーでは話しています。
そう考えると「リゾート施設を設計」しているのではなく、リゾートという語源にあるような「また戻って来たくなる体験自体をトータルで設計している」
ちょっと大きな話しですが、そうなんだなと思っています。
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日常空間となる住宅の内部空間は断熱の詳細な検討を行い、6地域で断熱等級5~7、C値0.3〜0.1を目標に設計をしています。断熱等級としては6を基準としていますが、ご要望や周辺状況に応じて無理のない設計をするために敢えて幅を持たせています。
この断熱等級は少し悩ましい部分があります。数値化されるのは良いのですが、やり始めると・・・コンマ1でも上げたいと欲求に駆られることです。そこに固執しすぎないで数値を利用するのは非常に難しくもありますが、Sデザインファームが高断熱・高気密を通じて意識している事は「次世代に少しでも良い地球環境を残すには、何が出来るか?」ということです。
断熱等級が高い内部空間では、消費エネルギーの少ない暮らし方を通じて地球の環境問題を考える事に繋がります。また屋内外に設けた「心おどる空間」を通じて地球の環境問題を考えることもあると思います。
片方(高気密・高断熱)があるから片方(心おどる空間)の良さがより体感できる・・・
そのような住宅を目指しています。
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コロナ禍によって住宅はどう変わったのか?
このどう変わったか?という話は・・・
住宅に仕事が入って来ることで、テレワークスペースが必要になる、帰宅後に手を洗う場所が玄関付近にあると良い、といった間取りや設備の話しではないです。
暮らし方、生き方と言っても良いかもしれませんが・・・そのような事に住宅は価値を提供できるのか?(ちょっと大きな話ですが)
この住宅の設計を通じて考えるキッカケとなりました。
Sデザインファームでは
「日常」に「心おどる空間」を、
というコンセプトで設計をしています。心おどるとは?どういう事か?
これは、ワクワクしたり、楽しかったり、驚いたり、ドキドキしたり
など「頭で考える事」でなく、「心が勝手に反応する」ような状態を例えています。
誤解を恐れずに言うと、コロナ禍において住宅は安らぎの場でもありながら、息苦しさもある場でした。
どんなに良い空間でも、あれだけの期間を閉じ込められると辛いのかもしれません。便利にオシャレに作られてて、使いやすい家事動線、美味しいコーヒーを入れる機器があってもでした。
その頃はまだ自身の設計したバスキッチンの家に住んでいましたが、あの頃の救いのはベランダ空間でした。幅6m、奥行き1mと小さな空間でしたが、テーブルを作り、スダレで日射を防ぎ、使っていなかった照明で即席のペンダント照明を作ったのですが、子供たちもそこで食べる夕食が楽しかったようで翌朝もその次の日もベランダで食事をしていました。
なぜ、ここは楽しいのだろう?
まず考えられるのが・・・元々が食事を想定していない空間だからだと思います。住宅には部屋名があり、そこで行われる活動を暗黙の内に指示されています(ちょっと考えると怖いですが)「ここでくつろぎなさい、ここで料理をしなさい」など。そのようにすることで利便性や快適性を高めていたのだと思います。でもあのベランダはそのような用途で使われることを想定していなったので、なにか子供が秘密基地を作るようなワクワクドキドキ感があったのだと思います。
次に考えられるのは・・・スダレを垂らした事による囲われ感と照明です。外ではありますが「何か室内を感じさせる」ものを散りばめた事で「外なのに落ち着く」という事が生まれました。キャンプと似ているかもしれません。きっと室内的なものがあるから室内と錯覚し、無意識の内に安心感を感じていたのだと思います。
このドキドキや心に作用するような場がキレイでオシャレで家事動線も完ぺきなのに、日常である家に不足しているのだと思います。
いま僕らが設計している住宅では、クライアントも当然異なりますし敷地も違います。でもそれぞれの家族の日常となる住宅には
「心おどる空間」を埋め込もうとしています。
想像通りの効果を発揮して欲しいですし、それを上回る効果や思いもかけない効果が生まれる事も期待しています。そのような事が、そこで過ごす人の日常や人生が更に満たされたものに繋がる・・・
住宅は満ち足りた人生を送るための器
と考えています。
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SデザインファームのHPに新しい住宅事例をアップしました。
村越邸は都心の狭小地、土地が5角形、密集地、水害ハザードマップで浸水1mの可能性、道路が交差する角地など大変やりがいのある敷地でした。ハウスメーカーで作るには扱いにくい土地だった事もあり、周辺相場に比べて土地代は安価で済みました。昨今の異常気象や暑さ寒さを考えると、この少し浮いた土地代を建物性能に加算して快適な家にしたいというお話になっています(ゆくゆく転売する際にも性能を付加価値にしたい)
担当の渡辺が検討したプランは水害時にも水がガレージに滞留せず普段は通り抜けられるように駐車出来るプランで、お客様もすぐに「これが良い」となりました。周辺は住宅が建て込んでいることや道路から見通せることから閉じつつ開くを基本方針として2Fに光庭を作っています。この都心密集地での「閉じつつ開く」がプライバシーの面では効果的でしたが、冬場の日射取得を減らしてしまうという難しさも生み出しています。このあたりの話を次回以降ブログに綴れればと思っています。
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バルコニー側の窓を閉めて、リビングとキッチン側をフルオープンにした時は、室内空間の一部に見えますが、点線のように引き戸を閉めて、バルコニー側を開けると外部の一部のようなお風呂になります。
ふと、このスケッチを見ながら思ったことはバスキッチンの家は10年前にデザインした住宅だけど、昨日打ち合わせをしたOutdoor roomの家も同じ事を目指しているのだと。
多分僕がこういう外だとも中だとも言えない部屋に心地良さを感じているんだと思います。
Instagramを見ると様々な素材やインテリア、デザインの家が溢れています。良いなと思った物を、なんで良いのかな?どうして自分はこれを欲っしたのかな?と考えてみてください。オーク材の木材が多い家を好きなら、自然感が今の家に足りてないのかもしれません。暗くほんのりとした明るさ感の家が好きなら、いまの家が明るすぎるのかもしれないです。
自分らしい自分たちだけの「心地よさ」のある家を作るキッカケになると思います。
鹿内健
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今日は1年前にお引渡しをした「駒沢の家」の点検でした。コロナもありメンテンスや写真撮影も出来ていない状態でしたが、時間の経過もあり家とクライアントさんの暮らしが良い感じに馴染んでいました。
先日HOUZZのレビューにも書いて頂きましたが、既にある家を自分たちに合わせるのではなく、自分たちに合う家を作るという事がうまく実現していて、メンテンスに訪れた小川協立建設の合田さんとも「いい家になったな〜」と2人で感嘆していました。
デザイン・施工だけで家は完成するのではなく、家という器がクライアントさんの暮らしにフィットして初めて家が完成すると改めて実感する日でした。写真撮影も近々できるので、またプロジェクトにアップしたいと思います(鹿内)
HOUZZリンク先:www.houzz.jp/pro/sdesignfarm/__public
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]]>ゴールデンウィークが終わりましたね。Sデザインファームは住宅設計が多いので、皆さんがお休みの日が稼働日となります。新しい家づくりのお問い合わせも3つ頂き、こちらの業務状況もご理解頂き大変恐縮です。ありがとうございます。
最近、鹿内のTwitterが断熱に偏っているとメンバーの渡辺に指摘を受けたり、GW中にお会いしたクライアントさんからも「デザインの人が断熱を理解しようとするのは珍しい」と言われたので考えている事を少し書きたいと思います。
Sデザインファームは沖縄で現在も数件の設計を進めていますが、設計する土地の歴史を調べると150万年も前の地層であったり、貴重な史跡に隣接する土地であったり、壊してしまうと復元が出来ない土地だったりします。建物を作るという「人の営み」のために土地を使うのであれば、クライアントさんは土地を購入するのですが、我々としては「しばらく建物のために土地をお借りし、長い年月の後には沖縄にお返しする」というスタンスで建物をデザインし、その土地や環境への負荷を最小限にしたいと思うようになりました。また沖縄では暑いですので、もちろんクーラーも気兼ねなく使いたいですし・・・そうであれば、なるべく環境に負荷の少ない建物は出来ないか?という事で断熱にも興味を抱いています。
今年始めにお引渡しをした「村越邸」ではHEAT20でG2グレードとなるUA値0.37を実現する事ができました。担当の渡辺とクライアントさんの並々ならぬ熱意によるところが大きいですが、設計し完成した建物の感想としては「デザインと断熱の両立」は今後も研究や勉強をすれば実現できるし、建築家の伊礼さんが言われていたように決してデザインを邪魔するものでないと実感しました。ただデザインと性能計算を行ったり来たりする作業と、数値を追い求めすぎてしまいそうになる気持ちを冷静に見極める事がポイントな気がします。
性能計算を知れば知るほど、どうすれば良い数値が出るかが分かるようになりますが、それは断熱という側面では正しいのですが、周辺環境やクライアントさんのライフスタイルに合わない提案になる可能性も秘めていると思います。(もしかしたらまだまだ勉強不足でそんな事はないかもしれませんが)
クライアントさんにも許可を頂き、性能計算をした「村越邸」の資料をアップしましたのでご興味がある方は見てください。
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模型写真に写っている階段の色合いと素材感に関して、このようなやり取りがありました。
ご主人
「鹿内さん・・・この階段の手摺壁ですが、あまりInstagramでも見たことなくて、、、大丈夫ですか?」
鹿内
「大丈夫ですよ。この階段は使う機能性と全体の色合い、素材のバランスから決めているので、あまり見たこと無いかもしれないですが(笑)僕らとしては全然心配していません」
ここで説明を終了してしまっては、ぼやーっとしてしまうので、もう少し詳しく説明しました。
物件担当の渡辺
「まだお子さんも小さいですし、階段手すり部分から顔を出すなどヒヤッとする事もあるのでシースルーの手摺よりも壁になっている方が良いのと、あと階段を上がった先も動画では手摺でしたが、要望でワークスペースを作ることになったので文房具落下も防ぐために腰壁になったので、良いと思いますよ」
Outdoor roomの家の最初期の動画:https://youtu.be/CotXDCenqDU
鹿内
「色合いや素材感に関しては・・・今回木造で大スパンをつくるために室内に構造材が見えてくるようになってきていて、当初よりも木材が見える割合が増えてきているんですよ。床はチーク材の複合フローリングですが構造材もチーク色の塗装にする予定です。壁は室内を明るくするために明るい色にする予定ですが、チークに近い赤みが僅かに入っている白からベージュくらいの明るさが良いと思っています。全体的な統一感は出ると思っていますが、その中で引き締める要素としてキッチンの立上りの石や異なる素材のアクセントがもう少しあると良いと思っていまして、手摺壁に金属的な素材感を当てようとしているんですよ。1/30の模型に素材を張り込んでいるのを見ると全体感が分かると思いますよ」
ご主人には説明出来ませんでしたが、もうすこし詳しく解説すると:
構造の理由で木材が増える=和室の長押(なげし)のような横材が壁面に出てきている。すこし和風な印象が出てきているし、木材が多いのでモッタリした感じ出てきそう。都会的でスタイリッシュなインテリアが好みの方なので、構造的理由でウッド感を減らすのが難しいのであれば、金属的要素でシャープさを入れてバランスを取りたい。という意図です。
渡辺
「窓の枠も黒になったり、以外と家電も黒が多いので、前回まで手摺壁を黒色にしていましたが鹿内とも強すぎるよね・・・と話になったので少しいぶし銀といいますか、くすんだ銀色くらいが良いかもと検討しています」
色や素材は、素材本来が持つ色だけでなく家電(TVや最近の調理家電は黒が多い)や持ち込む家具の色合い、あとはクライアントさんとのやり取りで段々掴めてくる嗜好性(好み・口には出さないけど求めているとおもわれる希望)も加味して「こちらの方が良いのでは?」と決めています。
ご主人
「2歩くらい先を行っていたんですね!ありがとうございます。先生!」
先日まで「鹿内さん」だったのに呼び方が「先生」に変わっているし・・・
「鹿内さん」で良いですよと思う楽しい打ち合わせでした。
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03. 現地見学+ご自宅訪問(2020年12月20日)
前回お会いしてから1週間後、ご自宅とリノベーション予定の建物を見学させていただきました。
まずはご自宅訪問。
最寄駅からリノベーション予定の建物との道中に現在のご自宅があるので、今回は先にご自宅を拝見させていただきました。いつもお願いをするのですが・・・「掃除や片付けはしないでください」とお伝えしています。必ず奥様からは「片付けてはダメですか?」と言われますが、ここはいつも心を鬼にして「ありのままで」とお伝えしております。お恥ずかしいですよね・・でも収納が不足しているのかも?キッチンが使いにくいのかもなど日常を見る事で「なるほど。ここが新居では改善したいのか」というのが実感として分かり、設計に反映されやすいからです。恥ずかしいかもしれませんが、新しい新居のためにと説き伏せています。30分ほど滞在で、いつも2人でお料理しているキッチンの広さ感や家電置き場、リビングでの過ごし方、寝室スペースに設置されたリモートワークスペースの難しさ、洗面室や浴室などのグレード感など確認できました。
その後、リノベーション予定の建物に移動。
今回はまだ売買契約が完了していない段階でしたので、契約を担当している不動産屋の担当者さんと建物の前で待ち合わせをして
見学です。売買契約が完了してから室内を見学することになると、設計のスケジュールがかなり遅くなってしまうのでなるべく売買契約が完了する前の段階で見せてもらっています。見学をすると
? 室内から見える風景や光の入り方と言った室内の居心地に関連する事
:隣接するマンションの廊下や屋外階段があり今回のお部屋も隣人と目が合いそうだと分かりました。
? 給湯器や設備機器など再利用できるものと撤去が必要なもの
:たまに以前の入居者さんが給湯器を交換したばかりで、再利用が可能な事がありコスト削減になります。
? キッチンの排気ダクトがどの経路で外部に接続されているのか?浴室や洗面室の換気扇がどのような経路か?
:キッチンの配置可能な場所は排水経路とレンジフードの位置でほぼ決まってきます。
? キッチンや浴室の排水がどの方向に流れているのか?
:これはこの段階でははっきりとは分からなく後日建物の竣工図を見る必要がありますがパイプスペースがどこにあるか?
など確認して設計で検討をします。
? インターホンはどのにあるのか?
:マンションのインターホンはマンションの所有物なので交換ができず移設には幹線の引き直しで想像以上の費用がかかるので
設置位置を確認しておきます。
? 分電盤はどこにあるか?
大抵は玄関付近の収納内部に設置していますが、まれに意外な場所にあるので確認をします。
売買契約前は何度も入室ができないので、初期の計画で必要なことを把握するために全ての部屋の写真を撮影し
1時間程度の滞在で見学を終了しました。
今回は全て解体するフルスケルトン工事ですが、再利用する部分リノベーションの場合は室内の寸法を採寸するので
滞在が3時間ほどかかる場合もあります。
Kさんとは年明けに1回目のプレゼンテーションをする日程を確認して、この日の見学は終了しました。次回は最初のプラン提案に関してです。実際の提案図面を元にお伝えしたいと思います。
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]]>02. 顔合わせ(2020年12月13日)
Kさんご夫婦が事務所にお越しになりました。とても仲の良いご夫婦でした。でも初回の打ち合わせということもあり少し緊張したご様子でした。(いや私も緊張しています・・・)まず今回の家づくりに至った経緯を事前にお送りいただいた資料を元に話していただき、すこし詳しく聞きたい事を掘り下げていくという形で打ち合わせは進みました。資料が充実していたこともあり素材などマテリアルの話でキッチンの壁面タイルに関して話が及んだ際には奥様が「渡辺篤史の建物探訪を見るのが大好きでキッチンの壁面タイルに憧れを抱いていたが、主人は賃貸で良いのでは?と話していたので、あ・・・私はこれを実現できないのかもと落胆していた。そこに家づくりをできる事になったので是非とも実現したい!」と強い決意を話されました。でもお手入れってどうですか?大変ですか?と質問をされましたので「そうですね・・・タイルとタイルの間の目地はどうしても油が飛んでも拭きにくいので決意と覚悟は必要ですね」という話をしました。僕は建築家はクライアントが家を実現する時に、建築の専門知識を持って「そっとアドバイスするコンサルタント」のようなものだと思っているので、こういう良さもありますし、でもこういうデメリットもありますよと話す事にしています(もちろん建築家だからこそ可能な提案も含めてです)。前職から含めたらそろそろ100軒くらいは家を作っているのだから、色々と引き出しは増えていると思っていますし。ただメンテナンスは必要ですが、でも好きなものは採用して良いとも思っています。その方が家に愛着が湧きますし、そのお手入れ自体も家を楽しむキッカケになりますので(僕らの自宅であるのバスキッチンの家はお風呂が大きすぎて掃除が大変ですが、子供たちも楽しんで掃除をいまは手伝ってくれますし。維持管理に手がかかるけど外車の魅力はあるというのと同じです)
一通りご説明を聞いたり質問をしたりしていたら2時間以上が経過し、奥様が「私こんなに話をすると思わなかった!」と話されたのが大変嬉しく思いました。
と、ここでご主人から質問が
「1回目のプレゼンテーションってどのような感じですか?」と聞かれました。
初回の提案は以下のような以前に提案した「斜め壁リビング」の家の提案資料をお見せしました。この斜め壁リビングではマンションリノベーションにも関わらず、部屋から見える外部や方位など周辺を読み込んで内部の間取りを提案するという事をしましたが、この斜めというのが面白いと話されていました。あといつも初回のプレゼンテーションの際に私からお伝えするのですが、「あくまでこの提案は模型も作りましたが、叩き台です。これを元に意見をぶつけて何が良いのかな?と話し合いをしていくのが進め方です」というお話もしました。
通常はここで初回の顔合わせが終了し次回の日程を決めるのですが・・・
この後にご主人から思ってもみない発言が。
「鹿内さん、契約したいのですが」
「え!?でもまだ提案してないですよ」
「そうなんですが、実は銀行の融資の件などあり、ちょっと提案を待っているまで時間がなくて。
あと話やすそうだったから大丈夫だと思って」と
隣にいた奥様も、もちろんOKという顔をしていて・・・
いままで設計事務所を10年以上も営んできましたが、あまりの展開でこちらが驚いてしまいました。その後に契約書の中身に関しても話しましたが、一応初回提案があまりにも希望に沿わなかったら無料で解約できる特約事項を記載する事にし、次回の日程を確認して顔合わせは終了しました。
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Kさんからのご連絡はメールでいただきました。メールにはコロナ禍で多くの方が直面しているようにリモートワークとなり自分たちの家が手狭になってしまった事。それに緊急事態宣言の直前に完成した自身の会社のオフィスを社員の意見を聞いて1から作り上げた時の楽しさに関して綴られていました。また弊社に連絡する前にリノベ会社など数社に相談をしたが、「誰がデザインするのか分からなくては不安」「わずか数回の打ち合わせで全てが決まるの?」など事務的に進む進め方に不安を感じているご様子でした。
正直このメールを見て初めて「そういう進め方をリノベ会社ではするんだ」と変な興味が湧いてしました。Kさんにはメールで連絡を取り、よろしければ事務所でお話をお伺いしますとご返答をしました。
その後KさんからPDF17枚に及ぶパワーポイントで作成したと思われるプレゼン資料が届きました。中には・・・
・マンション購入を考えたキッカケと課題感
・現状の賃貸の気にいっている事
・ご自身で測られた現状の家の寸法
・新居のリノベ前の間取り
・ご夫妻のリノベのコンセプト!
・実現したいことの概要(イラスト付き)
・実現したいことの詳細(各部屋)
・好きなイメージ写真
・いま持っている家具の写真
すごい・・・まず寸法がcmでなくmmで書かれているので、これは普通の方ではなく建築関係者?と思いましたが、以前に充実資料を作られた「斜め壁リビングの家」のご主人も同じく寸法表記がmmでしたので、このような充実資料を作成いただく方に共通なのかな?とも思ってしまいました(建築学生の方がcmやmで書いたりするので)ここまで充実資料を作るのは大変かと思いますが、でも自分たちの実現したいことをまとめておくのはとても良いと思います。一方でインスタグラムやピンタレストの画像検索で収集した写真も多く掲載されていましたが、「きっと好きなイメージが見えてきたけど・・・だんだん何が好きなのか分からなくなってきて、森に迷いこんでいないか・・・」と思い当日確認してみようと思いました。ただ僕らとしては本当に楽しく読ませていただき初回の顔合わせに臨むことができますし、完成後に家族で見返すと記念になるのでは?と思っています。
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今回駒沢のKさんのマンションリノベーションをするにあたり、どのようにSデザインファームは設計を進めているか、プロジェクトの進行に合わせてご紹介したいと思います。
と言いますのも、Kさんご夫妻が初めて事務所にお越しになった時に「プロである建築家に自分たちの要望をどこまで伝えていいのか?話したら怒られてしまうかも・・・」「毎回のプレゼンテーションってどのような成果物が出てくるの?」など色々と不安を話してくれたからです。
設計事務所を10年以上もしていると自分の行っている活動が当たり前になってきてしまい初めての方からどのように見えるかを意識しなくなっているのかも?と反省しました。そういえば前職のオンデザイン時代に担当した軽井沢のKさんも、初めて事務所に訪れて要望を代表の西田さんに話したが、その後ドッと疲れが出て帰りのモスバーガーで夫婦二人テーブルに突っ伏したと話していました。伝えることって大変エネルギーがいる事ですよね・・・
という事を少しでも追体験できれば設計事務所の敷居も低くなりますし、これから家づくりをする人のお役に立てるのでは?と思いKさんにも相談し、ご了解をいただいて書いています。
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